DJか彫り師になりたい、それが出来ないなら死にたい

20代独身、SE、東京暮らし7年目。犬が好き。猫も好き。

蹴りたい背中、殴りたい女

第167回芥川賞受賞作「おいしいごはんが食べられますように」を読みました。

読んでいる間、何度も吐き気がしたり涙が出そうになりました。

別に気持ちが悪いとか、胸糞が悪いとか、悲しいとか、そういった描写がある訳ではないです。

 

ただただ登場人物の持つ感情や、その場の空気の解像度があまりにも高くて、自分の感情が乗っ取られたような感じでした。

本にここまで振り回されることってあんまりないかもしれないなとも思いました。

 

今回の記事のタイトルがいささか不穏ですが、これはこの本に登場するある特定の女性のことを指しています。

 

こういう人間がいるから俺たちが割を食って、心をすり減らして、必要のない愛想笑いや取ってつけたようなお世辞を言わなきゃいけないんだよと、正直ずっと腹の奥底がふつふつとしていました。

 

弱い者を周囲のみんなが守って守って、壊れないように気を使って、その状況を嫌う人間も当然出てきて、弱いお前が元凶の癖に何かあれば被害者面しやがって、みたいな、穏やかそうな本のタイトルからは想像がつかないような、一見さらっとしてるんだけどいちいち心をえぐってくるような。こういうのを問題作って言うんですかね。

 

読み終わったあとも心にしこりを残すというか、安直に言うと考えさせられるというか、煮え切らないというか。

 

なんかこんな書評じゃ誰も読みたいと思えないかもしれないけれど、みんなに絶対に読んでほしいなと思っています。

 

心が軽くなったり笑えたり気分爽快!みたいな本では確実にないけれど、登場人物の気持ちに寄り添いやすいので自分をちょっと客観視できたり、普段抱えている心のもやもやを言語化することがきっとできます。

 

感情の整理のきっかけになる、と言ったら伝わりやすいですかね。

 

生きていくうえで出会ってしまうことになるであろう気に入らない人間、どう考えても許しがたい人間、そういう人間へのもやもやもやもやした感情、ぼんやりとした怒り、憎しみ、みたいなのが、煮たり焼いたりされていく様子を感じることができるかも?

 

吐きそうになるけど、それでもいいです。